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愛を胸に眠る
03 ひとり 出会う

 小さな私の身体では、手が届かない天井。
 無機質な蛍光灯が、私を見下ろす。

 私がどんなに手を伸ばしても届かない天井に迫るまで、高く積み木を積み上げていたあの子はいない。

 大人たちが、イジワルをして隠していたぬいぐるみ。
 どこに隠されても簡単に見つけだして、彼女をぎゅっと抱きしめていたあの子も、もういない。

 あなたも、ひとりね。

 そんなことを思っても、答えは返ってこない。

 誰もいなくなってしまった、ひとりぼっちのこの部屋は私には広すぎる。

 ROは『AIは、まだ』と、そう言っていた。

 それなら、AIはいつ?
 AIは、いつになったら「みんな」と同じになれるの?

 そんなことばかりを考えた。

 周りに大人はたくさんいる。

 寂しくて、広すぎる部屋を取り囲むガラスの窓の向こうから、大人たちはいつも私たちを見ていた。

 今も、ひとりになった私を見ている。
 大人たちは、見ているだけ。

 誰も、助けてはくれない。

 毎日お腹が空く頃にご飯はくれる。
 毎日イジワルをして、手の届かないところに置いたり、透明な箱の中に入れて来たり。

 だけど私が何もできずに泣きだして、しばらくするとガッカリしてご飯を目の前に置いていく。

 ため息をついて、落胆する大人の姿を何度も見た。

 手の届かない場所に取りに行ける子も、箱の中のものを呼び寄せられる子も、「みんな」逝ってしまったのに。

 「みんな」がいたときと同じように大人はイジワルをして、だけど私には何もできない。

 そのイジワルをどうにかできていた「みんな」は、もういない。

 「みんな」がしていたようなことを、私ができるようになることを大人たちは望んでいて、それだけ。

 ただ、それだけ。

 寂しい気持ちを拭い去ってはくれない。
 「みんな」と同じになる方法を、教えてもくれない。

 良くも悪くも、私はただの子供で、何の能力もなくて、ただ、私が「みんな」と同じになるときを――私が死ぬときを、待つことしかできなかった。

 彼女が現れたのは、私がそうやって死のときを待ちながら、ただ生かされていただけの日々――

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