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愛を胸に眠る
07 おやすみ

 「外に出してあげる」

 そう言って、彼らを送り出したのは昨日のこと。

 2人の小さな少年たちを外の世界へ送り出して、はじめはバレてしまうんじゃないかとも思ったけれど、そんなことはなかった。

 それどころではなくなった。

 ネオである子供たちの反乱。

 虐げられ、暴力を振るわれ、限界を迎えていた子は送り出した彼らだけではなかった。

 そして生きることを辞める子ばかりでもなかった。

 大人たちへの反発。
 闘うことを選んだ子がいた。

 はじまりは小さな火種だったかもしれないけれど、それはすぐに大きくなって、誰の手にも負えなくなった。

 たったひとりの感情の昂ぶり。
 そして、能力の暴走。

 ひとりの変化に、他の子たちも感化されて、まるで伝染病のようにそれはすぐに広まっていった。

 最初から、大人たちはネオである子供たちの能力を抑える術を持っていなかった。

 子供たちも、暴走した自分たちの能力を抑える術を知らなかった。

 そして、誰かが死んだ。

 大人も子供もなく、次々に死んでいった。

 誰かが死ぬのは辛かった。
 悲しかった。

 誰にも、死んでほしくなかった。

 誰かが死んで、悲しむ人が視えたから。
 悲しむ誰かが、必ずいたから。

 そして、その先の未来も。

 だから私は考えて、夢中で、何をどうしたか、なんてほとんど覚えていなくて。

 誰かが死ぬ瞬間が視えなくなって。
 誰かが悲しむ未来が視えなくなって。

 暴走は収まったと、気が付いたときには私は、起き上がることができなくなっていた。

 混濁した意識は、現実の世界へ戻ることができない。

 どうやっても、帰れない。

 でも、まあいいか。

 美咲と出会えた世界が、美咲と過ごした場所が、美咲が教えてくれたあたたかな世界が残っていると、守れたのだと思えば本望だ。

 そう思える。

 とても穏やかな気持ちで。
 あたたかな心で。

 だからおやすみ、世界――


*** 愛を胸に眠る 終 ***

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