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愛を胸に眠る
06 過去から今 そして未来へ

 不意に、部屋の扉が開かれた。

 見慣れた天井から、押し寄せる人の気配に視線を巡らせる。

 いるはずのない美咲の姿を探して、けれど美咲はそこにはいない。

 いるはずがない。

 もう6年も経つのに、この癖はなかなか止められそうにない。

「起きなさい、AI」

 しわがれた声が、私に命令する。
 起きろ、と。

 もう、私を「アイ」と呼んでくれる人はいない。

 私を取り囲む大人たちは、私という生物を観察する人たち。

 美咲のように、私を同じ人間の子供として見てくれることも、接してくれることもない。

 私はこの時間が1番嫌い。

 大人たちの心が入り乱れる。

 言葉と心が一致していない。

 過去と未来と現在が、人の数だけ交差する。

 ――クソッ、何で何もできねぇんだよッ――

 その中で視えた、それは過去か未来か。

 もしくは日常なのかもしれない。

 私ではない小さな子が、私よりも小さな子たちが、大人に暴力を振るわれている。

 その子たちは、私と同じく、大人たちがつくりだした子供で、ネオで、ただ、大人たちが認めるネオとしての能力を発現していないだけ。

 たったそれだけ。

 能力が発現していないというだけで、彼らはすでにその一生を終えようとしている。

 生きることを辞めようとしている。

 それはあまりにも、悲しいことじゃないかと、私は思ってしまった。

 美咲が教えてくれた外の世界は、とてもあたたかい世界だったから。

 私は未だに外の世界には行けていないけれど、あたたかな世界を視ることもできていないけれど、それでも……。

 美咲が教えてくれた世界を、私は信じたい。

 ネオである私には、もうできないことかもしれないけれど、人間の仲間として生きられる可能性がある彼らなら、あるいは――

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