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眠りの守り姫
03

そうして、
ある日の夜。

女の子と、女の子の友達が
森の中の小屋に集められました。

この小屋は、村から離れていて、
周りには森の木々以外、何もありませんでした。

小屋の中には、子供達が大好きな甘いお菓子や
おもちゃがたくさんありました。

子供達は喜んで、小屋の中へ入って行きました。

甘いお菓子を食べたり、おもちゃで遊んだり、
楽しく過ごしていましたが、
女の子だけは一人で悲しそうにしていました。

女の子は、どうして自分達が集められたのか、
そして、これから何が起こるのか、
全て分かっていたのです。

しばらくして、
遊び疲れた子供達は一人、
また一人と眠っていきました。

子供達が皆眠って、
小屋の中が静かになった真夜中、
大人達が動き出しました。

子供達が居る小屋に、
火をつけたのです。

窓のない小屋は、
扉の鍵がしっかりと閉められていて、
逃げる事はできません。

熱さや息苦しさで目を覚ました子供達は泣きました。


「助けて、熱いよ」


「息ができないよ」



けれど、どんなに助けを求めても、
大人達は助けに来てはくれません。

もう、大人達ではどうする事もできないくらい、
炎が広がっていたのです。

燃え盛る炎の中、
煙に巻かれながら、助けを求める子供達の中で、
女の子は思いました。

--私は、生きてちゃいけないのかもしれない--

--私がいなければ、皆がこんな目に合う事もなかったはず--

--私がいなければ、皆が大人達に嫌われる事もなかったはず--

--私がいなければ、皆は大人達と仲良く幸せに暮らせていたんだ--

そして、
女の子は神様にお願いしました。

「私の命はどうなってもいいから、どうか皆を助けて下さい」

女の子は、
大人達を恨んだりしませんでした。

女の子は、
大人達の事も、友達と同じくらい大好きだったからです。

もしも今、皆が死んでしまったら、
そう遠くない未来で、大人達が後悔して悲しむ事を女の子はわかっていました。

だから、女の子は強く願いました。


『皆を助けて下さい』


と。


友達だけじゃなく、大人達も皆。

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アルファポリス掲載版
守り姫
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2.守り姫の夢 3.守り姫の待ち人
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