2/16
優しさの理由
01 夢ミル 未来
外へ出る。
見上げる空は青く澄んで、白い雲が流れるように空を渡る。
眩しく照る陽射しに影が差すと、「暑いから」と帽子を被される。
ツバの広い真っ白な帽子は、ママと同じもの。
それがとてもうれしいと思う。
パパとママに挟まれて、手をつなぐ。
小さい手を、2人の大きな手のひらが優しく包み込む。
道を歩く。
小さな足に合わせるように、ゆっくりと進む。
道のはしに咲く、小さな花。
鳥たちのさえずり。
蝶たちが舞い踊る。
目に映るもの、耳に聞こえるもの、すべてがきらきらと輝くように一瞬を生きる。
風が吹き抜け、頬を撫で、帽子をさらっていく。
舞い上がる帽子は、風に乗り、ふわふわと離れていく。
ぐっと青空に伸びた手が、帽子を掴み取った。
両手をつなぐパパとママよりも年老いた、1人の男の人。
その姿を見て、つないでいた手を放し、その傍へと駆け寄って行く。
その人は「わたし」を抱きとめ、そして抱きあげる。
高く持ちあげられた身体にはしゃぎ、遅れてやって来るパパとママのもとに高い音が笑い声となって届けられる。
「わたし」を降ろしたその人は言う。
「大きくなった」
しわの多い手で、頭を撫でる。
それは夢。
誰かがみた、小さな夢。
誰かが望んだ、小さな願い。
ささやかでやさしく幸せな、誰もが想い描くありふれた未来――
-2-