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優しさの理由
04 遠イ 背中
最近、夢をみる。
それは、「わたし」が直接この目で見たことのないもの。
それはとても幸せな夢。
できるなら、ずっとその夢の中にいたいと思うほどに、その夢は幸せにあふれていた。
けれど、手を伸ばしても決して届かない。
届かない、幸せ。
届かない、背中。
存在しない手を伸ばして、届くことのないものを、手に入ることのないものを求める。
もしも「わたし」が、ほんの少しでも人間に近い姿だったなら。
意味のないもしもを思って、落胆する。
「キョージュ」が、もう2度と「わたし」を見てくれることはないのだとわかっていながら、それでもあり得ない奇跡を望んでしまう。
もう、すぐそこに「わたし」の死が近づいている。
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