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優しさの理由
05 彼女 ガ 生マレ
完璧だと称する彼女に何かあってはと、人間たちは慎重になる。
先に出したSIのように、死んだりはしないかと。
FUのように、突然おかしな行動をとるのではないかと。
「キョージュ」たちが固唾を呑んで見守る中、AIは外へと出された。
水中から出され、育った水を離れ、外の空気に触れる。
AIは、泣いた。
大きな産声で、それはまるで本当に普通の人間のようで、それがとても羨ましく思った。
彼女を抱きあげるその腕が、「わたし」を抱くことは決してないのだから。
「わたし」は彼女のように、泣くこともできない。
彼女の声を聞きながら、身体が軽くなっていくのを感じた。
とうとうそのときが来たのだと、「わたし」はそれを受け入れる。
誰も、「わたし」には気づかない。
産声をあげたばかりの小さな生命に盛り上がりをみせる彼らは、消え逝く「わたし」のことなど気にも留めない。
先に逝った彼らと同じように、「わたし」も外へと出ることができた。
初めて出る外は、何だかとても広くて清々しい気分になった。
旅立つ直前、彼女を見た。
AIの赤い瞳が、じっと「わたし」を捕らえて――
笑った気がした――
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