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愛を胸に眠る
06 過去から今 そして未来へ

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「アイ!? ねえ、アイ!? どうしたの!?」

 懐かしい声が聞こえる。

 もう2度と聞くことはできない人の――美咲の声。

 これは夢だ。
 『あの日』から、幾度となく見た、夢の中の現実。

 決して、やり直すことのできない、過去。

「ねえ!! アイ!!」
「やああああああああ!!」

 美咲の声を、拒絶すように私は叫んだ。

 小さな、幼い日の、私。

 どうしてあのとき、美咲の声だとわからなかったのだろう。

 どうしてあのとき、美咲の手だと気づけなかったのだろう。

 どうして、あのときだったのだろう。

 私の能力の発現の瞬間は、恐怖と共に訪れた。

 あのとき夢に見ていた大人たちのように、美咲は動かなくなった。

 血を吐いて、白い私を赤く染める。

 けれど私はそれにも気づかずにただ叫び続けた。

 バタバタと騒がしく駆け付けた大人たちにも私は気づかず、ただ叫んで、そして、殺した。

 そうしたかったわけじゃない。

 けれど、どうすることもできなかった。

 不意に発現してしまった自分の能力を、どう扱えばいいかわからなかった。

 何が起こるのか、わからなかった。

 何を引き起こしているのか、わからなかった。

 蛍光灯は割れた。
 割れたガラス片が、そこら中に飛び散って、飛び回った。

 小さな子供の私に近づいた、何人もの大きな大人が、その身体を壊して動かなくなった。

 広がる血だまり。

 転がる遺体。

 その中で、夢を見る私が目を奪われ続けるのは、たったひとり。

 いつまでもその姿を消すことなく。

 いつまでも、動くことのない。

 美咲。

 たった、ひとり。

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